商品の陳列什器をあえて平棚で結んで空間を演出したり、店内の雰囲気作りに木を使ったりすることで顧客に心理的なゆとりを持たせる試みを行う店舗が増えています。
商品陳列数を減らした棚割りを行う事で店内の通路幅を広めに確保。 顧客に“長居して下さい。 “どうぞ、ごゆっくり” というメッセージをレイアウトを通じて伝えることで顧客に居心地が良いと感じさせる効果があります。
従来よりもゆったりとした陳列のスペースを比較的高額な商品のプレゼンテーションのスペースにすることで足を止めて商品の説明や商品自体に興味を示す顧客を増やすことが可能です。
このような取り組みの結果として顧客は滞在時間を増やし、ついつい消費行動に走ってしまう。 結果、買上単価の上昇に結びついているようです。
仕掛けを作った棚割りを行ったゾーンの人の動きをチェックすることで効果の測定を一定の数値として“見える化”して評価を行う事が重要です。
限られたスペース内で購買機会を最大化する。 コンビニのマーケティングは人々の生活行動を心理面からも利用した工夫にあふれています。
一般にお客様の多くが求める飲料水系の冷蔵庫を店内の奥に配して人を店内奥深くへいざないます。次にお弁当、デザート、雑貨や雑誌と効率よく店内を移動させる間に顧客についで買いを誘うレイアウトに。
コンビニとアパレルでは効率の部分では逆の提案が必要ですが、一押しの商材はやはり分かり易い位置に配して人を店内に引き込むことが大事です。 細かな棚割りではコンビニのようにびっしりとカテゴリーで分けて配列させてしまうと買い物の効率が良すぎて結果滞在時間を短くしてしまうから注意が必要です。
店内のゾーン別の人の流れや滞留などを数値化することでお客様の多く滞留する地点を知り店内レイアウトを工夫。 人の滞留の多い地点に合わせ商材の配置を工夫することで買い上げ単価向上にもつなげることが出来ます。
店舗などをじっくりと観察していると出入り口付近で入りかけてやっぱり入らない。というUターン現象をよく見かけることがあります。
洋服を見に来たのに宝石店に入ってしまって慌てて出ていく、などということも稀にあろうかと思いますが、まったく違うお店と勘違いしてということは少ないように思います。 実店舗では訪れた人にまずは店舗へ入っていただく事が重要です。そのため訪れる人に対して魅力ある情報発信をしなければなりません。
有名ブランドであれば既に興味を持っている人々は黙っていても店舗内へ吸い込まれていくでしょう。 但しまだブランドをよく知らない潜在顧客に対しては店舗自体が一定以上の魅力や期待を発信出来るかで店舗内へお客様を引き寄せる事が出来るかどうかが決まります。 入口でUターンする率が多い場合には店舗のファサード周りのディスプレイに工夫が足りないのかもしれません。 直帰率を測る事で今まで見えてこなかった潜在顧客とその評価に気付く事が出来るかもしれません。
いわゆる臨機応変の対応が求められるのが接客業です。
もちろんほとんどの方に対して快適と思われる接客方法をマニュアル化することで誰でも一定以上の質で接客が出来るようになることは間違えではありません。 最近ではあえて積極的な接客を行わないお店が増えているようですが、来客数に対して店員さんが少ない場合には必要な時でさえ声掛けが出来なくなってしまうことも。 重要なのはさりげない“目配せ”ですが、必要な人員が確保できていない店舗では当然ながら1人の仕事量が増えてしまいます。
目の前の商品を畳んだりするのに忙しくてついつい必要な“目配せ”が出来ないまま「いらっしゃいませー」、「ありがとうございました」を繰り返す人も。 シャイなお客様の中には“声をかけて!”とキョロキョロと店員さんに信号を送っているものです。
来店者数を正しく把握して来店傾向にあったシフトを組むことで常に来店客数に対して必要十分なスタッフ数を確保することが出来、余裕を持って一人一人のお客様をさりげなく、でもしっかりとした“目配せ”により適切なお声掛けにつなげる事が出来ます。
従来トイレはどちらかというと汚い場所でした。外出時には出来るだけトイレは我慢するという方は多いかと思います。
昨今ではこの発想を逆手にとって一昔前では考えられないくらいきれいで快適なトイレがあちこちに出現しています。 古い商業施設などで集客力が落ちてきたらトイレを改修するだけでも思いがけず人が戻ってくるかも知れません。
現代では女性だけでなく男性にも汚いトイレは利用したくないと思う人が増えています。 トイレの利用状況を集計して一定の利用者数毎の傾向を掴めれば必要十分な無駄のないオペレーション(清掃作業)を展開する事が可能となり、オペレーションの無駄を省きつつ来店されるお客様に常に清潔で居心地の良いトイレ空間を提供する事が可能となります。
単純な原理ではありますが、滞在時間が増えれば購買の機会は同様に増えていきます。 時代は変わっても普遍的な人間の消費行動の一つのパターンです。 当然ながら店舗の場所や属性、来店される人の属性や目的、年齢層や時間帯、更には天候や個人かグループか、など様々な複合的な要因により傾向は異なりますが、平均値を取る事で一定した指標となります。
同じ大きさの日用品スーパーAとBがあったとします。 商品の品揃えも同じ価格も同じだとします。 立地も変わらなければほぼ同じような数のお客様が来店されるはずです。 ここでスーパーAでは店内のPOPを工夫して商品の説明を分かり易く訴えかけ、更に試食コーナーを設けるなどお客様の足を留める努力を行ったとします。 果たしてA店の平均滞在時間がB点よりも3分伸びたと仮定すると売上金額もA店の方がB店よりも大きくなる傾向になるはずです。
100円ショップでは顧客の平均滞在時間を1分増やす努力を常に行っています。
「来客数は店員が数取り器を使用して数えているから。」とは、たまに伺う話です。
では、店員さんがカウントしたデータとは、どの程度正確なのでしょうか?
弊社で過去に調査したほとんどの店舗様では、精度?と呼べるようなデータを取られている店舗様はありませんでした。 いわゆる“ながら測定”では正しいデータを取るのは不可能と言っても過言ではありません。 マーケティングのデータの大原則は精度というよりは、まずはデータの安定性が重要となります。 精度が無くて良いという事ではなく例えば70%の精度でも、常に70%でデータが収集できることが重要という意味です。 実際の精度が、ある日の午前中は空いていたため精度が比較的高く90%、だんだん混んできて午後の3時までは50%、その後は大忙しで測ってなくて。 などでは意味がありません。
長年の勘(中には昨日今日の勘もあるかと思いますが・・・)=不安定であるという事実をまずは理解していただく事で安定したデータ収集が如何に大切かということを知ることが大切です。
長年の勘=誤ったデータを基に立てた戦略を実行することを考えると空恐ろしいことです。